2026年4月17日(金)、神楽坂天窓。ライブが終わった瞬間、私は何も言えなかった。言葉より先に、ステージを降りてきた出演者たちの顔が目に入った。肩の荷がおりたような、でも何かが満たされたような——うまく説明できない表情だった。それがすごく良かった。
「Unscripted」。台本のないライブ。C-spark liverとして初めて主催したこのイベントが、4月の金曜夜に神楽坂で幕を開けた。
「Unscripted(アンスクリプテッド)」とは
英語で「脚本のない」「台本のない」「即興の」を意味する形容詞。事前に用意されたセリフや進行ではなく、その場で生まれるものを指す。
このイベント名は、その意味をそのままコンセプトにしている。台本を持ち込まない夜——それが「Unscripted」だ。
「台本のない」に込めた意味
Unscripted——この言葉をイベント名に選び、コンセプトとして打ち立てたのはC-spark代表の葉山彩貴だ。
準備が大事なのは当たり前だ。リハーサルで磨いた技術、音響と照明のチェック、MCの流れの確認——それをしないライブなんて、誰も望まない。
でも、ライブには「その瞬間にしか生まれないもの」がある。
緊張が声に滲むこと。予定していなかった言葉が口をついて出ること。お客さんの反応に引っ張られてテンポが変わること。そういう全部が混ざり合って、はじめて「ライブ」になる——と私は思っている。
「台本なし」とは、完璧を諦めることじゃない。準備の上に、その場の本気を重ねることだ。
そのコンセプトを象徴する演出として、この日は出演順すらステージ上で「台本なし」で決めることにした。あみだくじで。
あみだくじが生んだドラマ

オープニング。5人の出演者が全員ステージに集まり、1人ずつ自己紹介を行った。
「ライブ初めての方」「推しのライバーが出るから来た方」——会場には色んな人がいた。でも空気は最初から優しかった。演者がしゃべるたびに声で反応してくれる。笑い声が起きる。緊張感よりも、歓迎の空気が先にあった。
「出演順は、今日この場で決めます」
会場がざわめく。
「あみだくじで」
近くにいたお客さんがくすっと笑うのが見えた。
にゃも・喰。・松橋ひかりが中盤の枠に収まり、残ったのは二宮妃夜子と葉山彩貴の二択——「1番手(トップバッター)かトリ(5番手)」。場数を踏んできた2人が、自然とライブの両端に並ぶことになった。
二宮妃夜子があみだを引いた。1番手。
葉山彩貴のトリが、決まった。
その瞬間の彼女の表情が忘れられない。観念したような、でも何かを決めたような——腹をくくった顔で、笑っていた。

5人のステージ
二宮妃夜子——トップバッターの緊張の中、実力派の歌声を響かせた

1番手を引いた二宮妃夜子は、ギター弾き語りを中心としたステージを届けた。
この日の「初めて」は、今回初披露となる新曲2曲。MCでは、自身が初めてライブに立ったときの緊張を振り返り、「緊張しすぎて何を話したか忘れてしまった。みなさんの記憶の中で楽しんでいってください!」と笑い飛ばした。
ライブの「最初の1人」は難しい。会場の空気がまだ温まっていない。お客さんも、どう受け取っていいか探っている。演者がその空気を変えなければならない。
二宮妃夜子は、それを自分のものにしていた。明るく、柔らかく、でもちゃんと芯がある。ギターを鳴らすと空気が変わった。「二宮妃夜子ワールド」と呼ぶのが一番しっくりくる。その世界観に、会場全体が自然と引き込まれていった。
にゃも——「電流が走った」あの瞬間が、ステージに立つ原点になった

にゃもが「初めて」として語ったのは、アーティスト・Adoの音楽との出会いだ。
初めてAdoの歌を聴いた瞬間、電流が走るような衝撃を受けた。「こうなりたい」と強く思い、歌うようになり、配信を始めた——そのストーリーをMCで語った。
MCでは緊張や照れも見せながら、歌い始めた瞬間に空気が変わった。繊細さと迫力が同居する歌声。3曲目には、Adoの楽曲「ビバリウム」を披露。作曲の背景や歩みがそのまま歌詞に込められたような楽曲が、この夜のステージに重なった。
喰。——「初めて」で揃えたセトリが、会場を圧倒した

喰。は、今回のテーマを一番ストレートに体現した。全セトリを「初めて」で構成したのだ。
初めてのライブで歌った思い出の曲、初めて買ったCD——「初めて」にまつわる楽曲を1曲ずつ選び、それぞれの背景をMCで語りながら届けた。
普段の喰。を知っている人は、驚いたはずだ。ふにゃっとした、可愛らしい雰囲気。話しているときの柔らかさ。それがステージで一変する。歌い出した瞬間、会場の空気が変わった。声量、存在感、迫力。全身を使ったパフォーマンスは圧巻だった。
松橋ひかり——中学の文化祭で初めて歌った、あの曲を持ってきた

松橋ひかりが「初めて」として持参したのは、人前で初めて歌った曲だ。
中学生のとき、親に買ってもらったギターで一生懸命練習して、クラスの有志とともに臨んだ文化祭のステージ。あのときの曲を、今夜また歌う。そのエピソードを語るMCが、静かに会場に染みた。
長年積み上げてきた技術が、弾き語りの随所に宿っていた。安定した歌声が、会場をまっすぐ満たしていった。「皆さんの前で歌えるのが楽しい、嬉しい」——その気持ちが、音に出ていた。
葉山彩貴——セトリを決めずに来て、みんなのステージを見て、その場で決めた

葉山彩貴が「初めて」として明かしたのは、「今日はセトリを決めずに来た」ということだった。
4人のステージを前から全部観て、この夜の空気を全部吸い込んで、その場でセトリを決めた。「さっき決めました」という言葉が、会場を沸かせた。
1曲目は代表曲「エピローグ」。タオルを振り回しながら客席を煽り、会場のテンションを一気に引き上げた。
2曲目に選んだのは、「あゆみ」。彼女が初めて制作した曲だ。事務所を立ち上げてからの1年間——苦悩も、迷いも、それでも続けてきた日々。みんなのライブを見て「事務所を作ってよかった」と感じた正直な思いが、そのままステージに乗っていた。
終わったあとの顔

ライブが終わって、ステージを降りてきた5人の顔を見た。
緊張が解けた顔。笑っている顔。少し呆けたような顔。それから——満たされた顔。
全員が、それぞれの「初めて」を抱えてこの夜に立った。新曲の初披露、自分を変えた音楽との出会い、「初めて」で揃えたセトリ、人前で初めて歌った記憶、そしてセトリを白紙で持ち込む大胆な賭け。5人の「初めて」が、それぞれのステージを作っていた。
リハーサルでは慣れない進行に戸惑う場面もあった。でも、みんなが応えてくれた。それだけで十分だった。いや、十分以上だった。
当日の様子
当日のステージと会場の様子を、写真でお届けします。
出演者コメント
二宮妃夜子
みなさんこんにちは!にのみやひよこです!
この度はUnscripted vo.1にご来場いただきましてありがとうございました。
みなさま、お楽しみいただけましたでしょうか?脚本のない、という新たな試みの中トップバッターをやらせてもらえたのも、ある意味初めての体験ということで緊張半分、めっちゃ楽しい半分でやらせてもらいました(笑)全く予想してない展開でしたが…!
今回結構パツパツのスケジュールの中参加させていたんですが、少しでもたくさんの方に来て良かった!と思っていただけたら嬉しいです。今後とも、にのみやひよこ、もとい、C-sparkをよろしくお願いします!
またね!二宮妃夜子
松橋ひかり
Unscripted記念すべき第一回目に呼んでくださりありがとうございました。
初めての企画・演出、初めてのソロ出演でドキドキでしたが、いつの間にか緊張よりも楽しさが上回っていました!
手拍子をしたり、声を出して応えてくれたり、みなさんの温かい応援がとても嬉しかったです。
ありがとうございました。松橋ひかり
喰。
喉が治ってから初のライブ、思う存分気持ちをぶつけて歌えた。
少しでも誰かの心に刺さる歌を歌えてたら本望です。
来場してくれた皆さん、配信をご覧になってくれた皆さん、ありがとうございました。喰。
にゃも
ライブは楽しかったけど緊張が勝ってて楽しめるレベルまで達して無かったのが現状でした。
でも、あんなガチガチでめっちゃ怖い顔して音外しながら歌っている私の歌を「凄く良かったよ」って言ってくれた人達がいた事が本当に嬉しかったです。他の出演者の方々を見て、もっと歌のスキルをあげないと、と思わせてもらいました。
東京は遠くて中々行けませんが、機会があったらまた歌いたいなと思わせてもらえるライブでした。
誘ってくれたサキ(社長)を始めこのライブに関わってくれた全ての方々に、本当にありがとうございました。にゃも
葉山彩貴
起業して約1年という節目で企画したライブでした。起業してからは「責任」が増えていくのをただただ実感する日々でした。しんどい事も悩む事も多かったです。初期からC-sparkという場所を選んでくれたみんなにとてもとても感謝していますし、何よりみんなのステージを見てこの場所を作って良かったなと心の底から思えました。
Unscriptedにちなんで、あみだくじで出演順を決めましたが、神様は分かっているかのような順番に落ち着いたのも感動モノでした。全員が1番輝ける順番だったと思っています。それぞれの個性がしっかり光った素敵なステージでした。
でも、私たちはまだまだ発展途上です。伸び代しかありません。第2回の時にはこの感動を上回る素敵な時間をお約束します。葉山彩貴
「伸び代しかない」から、次が楽しみだ

葉山彩貴のコメントにあった言葉が、今も頭に残っている。
「私たちはまだまだ発展途上です。伸び代しかありません。第2回の時にはこの感動を上回る素敵な時間をお約束します」
vol.1が終わった。次はvol.2だ。
どんな夜になるかは、まだわからない。台本がないから——それは、これからも変わらない。
でも確かなことが一つある。この日に集まってくれたお客さんと、ステージに立った5人が作り上げた空気は、本物だった。あの夜の「Unscripted」は、誰のシナリオにもなかったけれど、誰の記憶にも残る夜になった。
次の「Unscripted」を、楽しみにしていてほしい。
よくある質問
Unscripted vol.1はどこで開催されましたか?
2026年4月17日(金)、東京都新宿区の神楽坂天窓にて開催されました。
Unscripted vol.1の出演者は誰ですか?
二宮妃夜子、にゃも、喰。(ばみ)、松橋ひかり、葉山彩貴の5名が出演しました。
主催はどこですか?
合同会社C-sparkが運営するライバー事務所「C-spark liver」が主催しました。
次のUnscriptedはいつですか?
vol.2の開催については、決まり次第C-spark liverの公式サイトおよびSNSでお知らせします。
取材・文:C-sparkマネージャー|2026年4月22日公開